月刊『官界』インタビュー(抜粋)【H13.10/24】
「集団的自衛権の行使」

 
Q.   米国が同時多発テロを受けた、本年9月11日。この日は「世界が変わった日」と言われているが、日本だけではなく、世界中の安全保障に関する観点が変わった日でもある。自衛隊派遣を含む7項目の支援策を小泉総理が表明し、その具体策として「テロ対策特別措置法案」を今国会に上程。一方、自衛隊を実戦に出すという不安が国民の中にあることも事実。戦後の日本の安全保障政策が大転換期を迎えているが、島村さんの意見を伺いたい?
 
島村  ブッシュ米国大統領はこれを戦争だと言ったが、これは戦争よりも遥かに恐ろしい。随分怖い時代になったなと率直に思う。戦争というのは、お互い異なった国同士が利害の対立等で険悪になり、遺恨ができて、抜き差しならなくなるもの。しかし、状況判断で戦争突入の可能性は充分に予期できるし、そうなったら様々な対策を講じることができる。ネゴシエーションもできる。ところが、テロはある日突然、多くの民間人が巻き込まれて行われるもの。今回は、民間機がハイジャックされて、超高層ビルに突っ込み、多くの犠牲者を出した。また、バイオ・テロの危険性も大きく取りざたされている。
 テロは実際に相手がどの程度のことを企んでいるかの情報の把握は難しい。加えて、今回の場合、そこに宗教問題が入り込んでいる。宗教は世の中を支え、人々を救うとても大きな存在価値がある反面、人間の判断力を奪う恐れを持っている。その意味からも、今回のテロの背景は根深いし、再発の恐れも充分ある。今後、どこまで波及していくのかと非常に心配だ。
 
 
Q. 国際情勢については?
 
島村  今まで日本は憲法を盾に、或いは安保を支えに「平和」をむさぼってきたが、少なくとも今まで私が訴えてきたように国際環境は大きく変わった。平成元年にベルリンの壁が崩壊。翌年には、イラクがクウェートに侵攻、一方では東西ドイツの統合。平成3年にはいよいよ湾岸戦争が勃発した。当時、日本を含めた国際社会が、イラクのクウェート撤退の主張だったが、私は戦争突入を危惧した。実際、湾岸戦争は起こった。イラクは世界の約10%の石油埋蔵量を持っているが、輸送の手段、港を持っていない。お隣りには、立派な港を持つ裕福なクウェート。ともすれば、厳しい財政事情を抱えたイラクがクウェートを手中に収めようとするのではないかと当然考えられた。要するに、総体的に物の見方が穏健過ぎたということです。すると今度は、「こんな戦争3〜4日で終わる。大人と子供の戦争だ。」と。こういう見解が多かったが、私は逆の考えだった。あそこはメソポタミア文明発祥の地で、国際的な遺産が多くある。これを破壊したら世界から未来永劫叩かれるわけだから、非常にやり難い。軍事施設だけを攻撃するには時間がかかる。また、宗教観を背景に持つ人々はそう簡単に手を挙げない。案の定、2ヶ月かかりました。
 同年、ソ連の解体、すなわちペレストロイカが起こった。この一連の動きの中で、日本を今まで守っていた国際環境は大きく変わった。この変化を認識すべきである。つまり、東西冷戦構造が成立していた段階では、日本は米国にとって極東に位置する大事な基地であり、防波堤であった。すなわち日本を守る理由があった。しかし、冷戦の終結によってこの理論は通用しなくなった。日本は日米安保にあぐらをかいている状況ではなくなったという結論になる。
 平成10年には北朝鮮から発射されたテポドンが日本の頭上を越えた。三陸沖60qの地点と520qに着弾。意図的に外したかどうかは判らないが、もしこれが京浜工業地帯に落ちていたら、日本経済は根底から打撃を受けたでしょう。
 今回の事件も、決して「対岸の火事」ではない。日本にだって起こり得ること。意図的に日本が攻め込まれた場合、何を頼りにこの国を守れるのでしょうか。どのように日本国民の生命と財産、尊厳を守れるのかということです。ブッシュ大統領がこれは戦争だと言うのは過言ではなく、我々は自分たちにも非常に関係が深いという認識でこれを考えるべきである。党派を超えて、きちっと対応するべきであると考えます。
 
 
Q.  つまり、今回のテロ対策特別措置法案の内容は歓迎できる。いいことだと考えている?
 
島村  いいことも何も、やらざるを得ない事案だ。
湾岸戦争時に、日本から支援金として130億ドル、日本円にして1兆7千億円。戦争終結後にペルシャ湾の機雷除去作業を行ったのは、日本の掃海艇だった。しかし、国際社会の評価は最低だった。「日本は汗も血も流そうとしなかった。」と、軽蔑のような面も含めて、国際社会から遅れをとった。ただ、その当時はそれで済んだ。しかし、今申し上げた通り、一連の動きの中で、ソ連の脅威が消滅した段階で、日本は丸裸になった。米国が経済的に非常にドラスティックになったのもあの時点からで、日本という国を愛情を持って考える必要がなくなった。だから、日米安保だって、いざというときにどれだけの頼りになるのかと疑問視しています。そろそろ独立国家としての体制をきちっと固める時期ではないかと考えます。
 
 
Q.  テロ犯罪人を逮捕したり、懲罰する行為の延長線上での国際社会の動きを日本として支持、支援する内容ですが、つまり自民党の中に長くあった「集団的自衛権の行使」について、政府は解釈を変えるべきだという主張に今回は踏み込まなかった。これについては?
 
島村  要は、自民党の中にも色々な意見があるということ。自民党はタカかハトかと言えば、タカが多い中で、ハトを売り物にしてきた人もいる。ハト的な主張を政治家として具現していこうという真面目な考えの人もいる、これは幅広い。だから一気にまとめ上げようとすると党の分裂にも繋がりかねない。しかし、今は、もういつまでもぐずぐずしているときではない。「日本の平和と安全」を考えたときに、「集団的自衛権の行使」是非論をしている場合ではないと思う。
 
 
Q.  島村さんが所属している派閥では「集団的自衛権の行使」は可能だという解釈を主張する人が多いが?
 
島村  はい。これはやはり国際的責務であると同時に不可欠な自衛の手段です。
 
 
Q.  すると、テロ対策特別措置法は時限立法だが、テロ問題に限って言えば、恒久的な対策法が必要だと考えるか?また有事法制についてはどうか?
 
島村  従前のテロ認識というのは、特定の人間を的に行われる行為だった。しかし、国内で地下鉄サリン事件を経験し、今回のニューヨークの事件を見たときに、最もこれに震え上がらなければならない立場に日本はいると思う。海外へ行って世界地図で日本を見ると、まさに極東にある。何かちょっと試そうと標的にするには格好の材料ではないだろうか。広島と長崎には原爆が落とされた。日本は大変な被害を受け、今でも憤っているが、日本がもしヨーロッパに位置していたら、原爆は落とされなかった。極東の島国だからこそ、格好の演習材料になったのではないだろうか。どこの国が何をしないという保証は全くない。さきほどテポドンの話しをしたが、現実に日本の頭上を越えられていることへの認識が薄い。このあいだ、某有名大学の学生に「テポドンって何でしたっけ?」と言われ、唖然としました。もっと様々な角度から国民の認識というものを喚起する必要があると考えます。
 
 
以上

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